Wednesday, Apr 30

US News 米国発ニュース

キッシンジャー元国務長官死去、100歳 現実主義、米中を重視、伏線に沖縄、対日冷ややか

2023年12月1日

11月29日に亡くなったヘンリーキッシンジャー元国務長官は、共和党のリチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード両政権で外交安全保障を取り仕切った。

最大の見せ場は中国共産党との歴史的な関係構築に尽きる。

伏線として直前にまとまった沖縄返還交渉があった。

現在の中国の台頭を見越し現実主義的なパワーバランスに基づく米中関係を重視した一方、
日本への視線はどこか冷めていた


1971年に二度にわたって極秘訪中。

1972年のニクソン電撃訪中の地均 (なら) しに当たった。

機密解除された会談記録によると、周恩来 (しゅう・おんらい) 首相に「中国には普遍的な視点があるが日本の視点は偏狭」「日本に幻想は抱いていない」と明かした。


反共のニクソン政権でありながら、中国共産党と手を結んだ背景には、台湾に逃れた蔣介石 (しょう・かいせき) の国民党ではなく、北京の毛沢東 (もう・たくとう) が実質的な支配権を既に固めていたという現実が勿論ある。

対ソ連の戦略的意味合いも大きい。


ただ、その前段として、日本が繊維問題譲歩する一方、米国が核抜きの沖縄返還を認めた1969年の日米首脳会談は無視できない。

繊維の対米輸出規制を日本側が速やかに履行せずに米国の怒りを買い、日本頭越しの「ニクソンショック」につながったと言われてきた。


首脳会談の際に佐藤栄作首相とニクソン大統領の間で交わされたのが、核再持ち込みに関する密約だ。

首相の密使を務めた国際政治学者の若泉敬 (わかいずみ・けい) 氏は内密にするため、細かい段取りを詰めた。


米側にとってはも大切だが、繊維も重要だった。

若泉氏の回顧録で、キッシンジャー氏は「俺がこんな細目にまで介入することはないんだ。

米日関係が大事だし、ニクソン大統領が佐藤首相に個人的な敬意を表しているから、やっているだけなんだ」と、苛 (いら) 立ちを見せている。


キッシンジャー氏は1923年にワイマール共和国下のドイツに生まれた。

1938年、ナチスの迫害から逃れるためユダヤ人の両親と渡米。

冷戦下の1969年、ハーバード大教授からニクソン氏の国家安全保障問題担当補佐官に就いた。


1973年、ベトナム和平に努めたとしてノーベル平和賞を手にしたが、側近を重用し官僚に情報を渡さない秘密主義のほか、中ソの人権侵害や独裁の黙認権力への露骨な擦り寄りで非難も浴びた。


外交の大家として晩年まで米政権に頼りにされた。

今年7月には米中関係の改善を目指したジョー・バイデン政権の意を汲 (く) む形で、100歳を超えていたにもかかわらず中国を訪問し習近平 (しゅう・きんぺい)
国家主席と会談、米中関係安定の重要性を唱えた。


*Picture:© Truba 7113 / shutterstock.com




「一つの時代終わった」 鋭い知性、別れ惜しむ
 
「一つの時代が終わった」

「中国と米国の関係強化を促進した」

1971年の極秘訪中で国交正常化に道を開いたキッシンジャー元米国務長官。

中国では死去を惜しむ声が上がり、米メディアは切れ味鋭い知性で知られながら、型破りの行動に批判も浴びた「賢人」の業績を振り返った。


中国外務省は11月30日、習近平国家主席がバイデン大統領に弔電を送り「深い哀悼の意」を表したと発表。

外務省の汪文斌 (おう・ぶんひん) 副報道局長はキッシンジャー氏が「中国の古き良き友人」と述べ、米中国交正常化への「歴史的貢献」を称賛した。


米国では、ベトナム戦争収束でノーベル平和賞を受けた半面、ニクソン大統領の中国訪問に至る秘密外交は批判の的に。

「彼ほど熱烈に称賛され、また罵倒 (ばとう) された外交官はいない」 (ニューヨーク・タイムズ紙)

「共同大統領」 (AP通信) とも言われ、比類のない統率力を発揮したキッシンジャー氏について、CNNテレビは、良くも悪くも「1970年代の米外交の代名詞」と評した。


昨年10月にキッシンジャー氏と会談した岸田文雄首相は「若い頃からたびたび直接お会いし、知見を賜った」と振り返った。

松野博一官房長官もキッシンジャー氏が2007年に連名で核廃絶を提唱した経緯に触れ「核兵器のない世界の実現に向け、大きな影響力を及ぼした人物だった」と称えた。



(2023年12月16日号掲載)

窒素吸入で死刑、初執行へ アラバマ州、薬物注射の失敗で

2023年11月27日

2024年1月から、アラバマ州窒素 (nitrogen) 吸入による死刑執行実施される見通しとなった。

英医学誌は世界初としている。

米国の死刑で40年以上使われる薬物注射は失敗が相次ぎ、死刑囚が苦しむ事例が発生したためだ。

擁護派は窒素吸入なら苦痛がないと主張するが「根拠はなく情報開示も不十分だ」との批判も出ている。


米国で薬物注射による死刑執行が始まったのは1982年

鎮静剤と筋弛緩 (しかん) 剤、心臓を止める薬を注射するのが一般的。

だが、製薬会社は製品が死刑に使われるのを嫌い、流通を制限。

注射の担当官の技術が未熟で失敗する事例も起きている。


昨年11月にはアラバマ州で殺人罪が確定した50代のケネス・スミス死刑囚が寝台に数時間固定され、何か所も針を刺されて著しい苦痛を経験。

再び薬物注射による死刑執行をしないことなどを求めて訴訟を起こし、「問題を避ける現実的な手段は窒素吸入だ」と主張した。


窒素は空気の78%を占める気体で、高濃度では酸欠を起こす。

労災事故の事例から、苦痛をほぼ感じないで死亡に至るとみられ、少数の州が死刑への利用を認めた。

一方、獣医学会は動物の安楽死指針で、一部の哺乳類については苦痛を引き起こすため「許容できない」とする。


米法曹協会 (American Bar Association=ABA) によると、アラバマ州のケイ・エレン・アイヴィー知事は裁判所の判断に従い、スミス死刑囚に関して窒素吸入を使った執行期日を設定。

顔にマスクを装着させ窒素を流す方法だが、同州が開示した手順書は黒塗りが多く、1例目は「新手法の実験台になる」と懸念されている。

アラバマ州内にガスを供給する一部業者が窒素ガス供給を拒否したとも報じられた。




(2023年12月16日号掲載)

オープンAIのCEO退社 開発、ルール作りに影響も

2023年11月18日

対話型人工知能 (AI) 「チャットGPT」を開発した米新興企業のオープンAIは11月17日、サムアルトマン最高経営責任者 (CEO) が退任すると発表した。

取締役も辞めて退社する。

「取締役会の検討を経た結果だ。アルトマン氏がオープンAIを率いる能力を信用できない」としており、事実上の解任とみられる。


アルトマン氏は急成長する生成AI業界として活動しており、突然の退任に驚きが広がった。

チャットGPTの開発やAIのルール作りに影響が出る可能性がある。


ミラ・ムラティ最高技術責任者 (CTO) が暫定的なCEOに就き、後任の人選を進める。

オープンAIはアルトマン氏が取締役会と十分なコミュニケーションを果たしておらず、取締役会の機能を妨げていると指摘した。


オープンAIと提携するマイクロソフト (MS) のサティア・ナデラCEOは「我々は長期契約を結んでいる。これからも互いにAI技術を世界に届けていく」とコメントした。


アルトマン氏の退任でMSのオープンAIへの影響力が強まるとみられ、同氏がMSに入社してAIチームを率いる可能性もある。


アルトマン氏は16日にアジア太平洋経済協力会議 (APEC) の関連イベントで講演するなど、直前まで精力的に活動していた。

4月に訪日した際には岸田首相と面会し、自民党の会合にも出席してAI技術を売り込んでいた。


アルトマン氏は2015年に電気自動車大手テスラなどを経営するイーロン・マスク氏らとオープンAIを創業。

昨年11月にチャットGPTを一般公開し、急速に利用を広げた。



*Picture: © Adrian Tusar / shutterstock.com




(2023年12月1日号掲載)

LA自動車ショー開幕 新型フォレスター初公開

2023年11月17日

ロサンゼルスでの国際的な自動車展示会「ロサンゼルス自動車ショー (Los Angeles Auto Show)」の報道公開が11月16日に開かれた。

SUBARU (スバル) は北米で人気のあるスポーツタイプ多目的車 (SUV) の「フォレスター (Forester)」の新型を世界で初めて公開した。

米国では来年春に発売する。


スバルはフォレスターにハイブリッド車 (HV) を設定する方針も明らかにした。

米国はスバルの主力市場の一つで、記者会見した大崎篤 (おおさき・あつし) 社長は「引き続き米国市場に注力していく」と強調した。

2030年に電気自動車 (EV) の世界販売台数を60万台とする計画に沿って、新型EVを順次発売する方針も表明した。


トヨタ自動車はSUV「クラウンシグニア (Crown Signia)」と米国で主力となっているセダン「カムリ (Camry)」の新型を出展。

新型カムリは全てHVとし、エンジンだけのモデルを廃止する。


ホンダはともに米国で来年売り出すSUVタイプのEV「プロローグ (Prologue)」、高級ブランド「アキュラ (Acura)」の「ZDX」を展示した。


米国の新興EVメーカー、ルーシッドモーターズ (Lucid Motors) も初のSUVを世界に向けて公開。

EVのSUVでは最長の航続距離となる約700キロを走破。

競合社のテスラ (Tesla) を急追する存在となりそう。


環境規制に厳しいカリフォルニア州2035年以降のガソリン車販売を禁止する予定。

今年のLAオートショーは近未来の自動車市場の変革に焦点を当てた内容となった。



*Picture: ©  Shutterstock-Pixelsquid / shutterstock.com



(2023年12月1日号掲載)

期待外れか、氷山の一角か ハマス拠点の主張揺るがず

2023年11月17日

パレスチナ自治区ガザ最大のシファ病院に突入したイスラエル軍は、イスラム組織ハマスの武器を発見したと発表した。

病院をハマスの軍事拠点だと主張していたが、公開した映像では数は少なく、同国メディアからも「期待外れ」との指摘が出る。

ただ、イスラエル軍は見つかったのは「氷山の一角」だとし、主張は揺らがない。

同盟国の米国の支持を受け、中枢の司令部があるとみる地下トンネル網の攻略を急ぐ。



▽プロパガンダ

「ハマスが国際法に違反して、組織的に病院を軍事利用していたと確認した。疑う余地はない」。

イスラエル軍は11月15日夜、病院のMRI病棟内部を撮影した映像を公開し、イスラエル国防軍のジョナサン・コンリカス報道官がハマスのものとされる武器を誇らしげに紹介した。


自動小銃AK47や弾薬、戦闘服が入ったバッグがMRI装置の裏に隠してあったと説明。

同様のバッグが病棟で計3つ見つかり、全ての監視カメラに目張りが施されていたという。


イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は記者会見で、通信機器を備えた作戦指揮所も発見したと主張した。


成果を強調する軍には疑念の声も上がった。

イスラエルの英字紙エルサレム・ポストは「18時間以上捜索したのに、ハマスの存在を示す証拠としては期待をはるかに下回る。戦闘員は蒸発したのか」と論じた。

同国のラジオも「イスラエル軍はまだ人質がいたとの痕跡を見つけていない」と批判した。


ハマスは映像を「安っぽいプロパガンダだ」と一蹴。

パレスチナの人権活動家ムスタファ・バルグーティ氏も、病院がハマスの拠点だったかどうかは「国際的な第三者委員会の調査」に委ねるべきで、イスラエル側の主張は一方的だと批判した。



▽全面支持

これに対し、米国はイスラエルを全面的に支持する。

「病院の地下に司令部があり、ハマスの武器や資材があるのは確かだ」。

バイデン大統領は15日、サンフランシスコ近郊で開かれた米中首脳会談後の記者会見で、イスラエル軍によるシファ病院突入について質問され、こう強調した。


国家安全保障会議 (NSC) のジョン・カービー戦略広報調整官も、ハマスが病院を軍事利用しているとの米国独自の分析に「大いに自信がある」と断言した。


ただ、ハマスは地下にトンネル網を張り巡らせており、全長数百キロ、深さは最大80メートルといわれる。

イスラエル軍は特殊工兵部隊を投入しているが、トンネルはハマスの根城。

人質が拘束されている可能性があり、攻略は難航必至とみられている。




ガザ病院でトンネル発見イスラエル軍攻撃正当化 

パレスチナ自治区ガザに地上侵攻するイスラエル軍は11月16日夜、北部ガザ市にある地区最大のシファ病院の捜索で、トンネルの縦穴と武器を多数積んだ車両1台を発見したと発表した。

イスラエル軍は病院の地下にイスラム組織ハマス中枢の司令部があるとしており、攻撃の正当性を強調した。

イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は16日、ガザ市西部地域の制圧を表明。

軍は南部の住民にも避難を要求しており、南部にも侵攻する構えを見せている。


病院攻撃は国際人道法違反との批判が高まる中、イスラエルは地下トンネルが存在する証拠提示を迫られている。

ハマスは病院の軍事利用を否定。

指導者ハニヤ氏は16日「でっち上げの嘘 (うそ) に基づく攻撃」と非難した。




*Picture: ©  Anas-Mohammed / shutterstock.com




(2023年12月1日号掲載)

IPEF首脳、対中念頭に貿易先送り 脱炭素、税逃れの3分野で妥結確認

2023年11月17日

新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み (IPEF)」交渉に参加する日本や米国など14か国は11月16日、サンフランシスコで首脳会合を開いた。

終了後、首脳声明を発表し、妥結を先送りした貿易を除く3分野で決着するなど「記録的な速さで目標を達成した」と会合の意義を強調。

昨年9月の交渉入りから約1年で、初めてまとまった形での成果となった。

覇権を強める中国へ対抗する狙いがあり、中国への依存度を減らしIPEF域内の競争力を高めることを念頭に、重要鉱物に関する対話枠組みを創設することも示した。


声明は脱炭素化などの妥結が「今後も前進し続けるための基盤を築いた」とし、来年から毎年閣僚級会合、隔年に首脳会合を開くことも明記した。


* * * * *

IPEFは環太平洋連携協定 (TPP) の代替策としてバイデン政権が主導。

関税引き下げは議題に含めず、「貿易」や「供給網強化、脱炭素化を推進する「クリーン経済」、税逃れ防止を含む「公正な経済」の4分野を柱として交渉を進めてきた。

このうち3分野で妥結に至り、大きな節目を迎えた。


首脳会合で、岸田文雄首相は「大きな進展をみたことを歓迎する」と述べた。

より意義のあるものにするためには「全参加国の積極的な関与が不可欠だ」とも強調した。

バイデン大統領は「共により良い未来を切り開いていく」と、交渉成果への手応えを語った。

新たな加盟も歓迎するとの考えも示した。


IPEFをめぐっては昨年5月に発足会合を東京都内で開催。

9月に交渉入りを決めた。

今年5月には供給網強化の協定締結で妥結。

11月13~14日にサンフランシスコで開いた閣僚会合で、クリーン経済や公正な経済の2分野でも実質妥結に漕 (こ) ぎ着けた。

米政府は16日、今回妥結できなかった貿易分野について「引き続き努力する」との声明を発表した。


* * * * *

アジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議も11月16日、本格的な討議を開始。

計3日間の日程で、バイデン氏が議長を務め、岸田氏、中国の習近平国家主席らが出席。

岸田氏は、自由で開かれた貿易や経済のデジタル化の推進といった日本の立場を発信した。



* * * * *

貿易先送りには失望、マシュー・グッドマン氏

▪︎ 米シンクタンク、外交問題評議会のマシューグッドマン氏の話:インド太平洋経済枠組み (IPEF) で交渉されてきた4分野のうち、貿易を先送りする結果は、インド太平洋地域や (通商政策に注目する) 米ワシントンの人々を失望させるものだった。この地域への米国の経済的な関わりに疑念を抱かせている。ただ、楽観的な見方をすれば、協議は継続され、来年には何かを引き出せるかもしれない。実質的に妥結した他の分野ではいくつもの有益な成果を含んでいる。



(2023年12月1日号掲載)

安全性向上へIT駆使 ウーバー、事故時は保険も

2023年11月15日

米配車大手ウーバーテクノロジーズの幹部は11月14日、米本社で取材に応じ、自家用車を使って有償で客を運ぶサービス「ライドシェア」をめぐり、乗客や運転手の安全性向上へITを駆使してアプリの機能拡充などを進めていると強調した。

米国ではウーバーアプリを使う全ての乗客や運転手に対し、人身や物損事故があった場合は、ウーバーが契約する損害保険適用されるとも説明した。


製品管理責任者のサチン・カンサル氏は、安全対策に関し「ウーバーが最も安全で信頼される交通
手段の選択肢に選ばれるように、テクノロジーを活用した対策の改善を続けている」と語った。

ITを使った安全策としては、全ての配車を衛星利用測位システム (GPS) で追跡しており、目的地に
適切に向かっているかどうかを監視している。

乗客が不安を感じればスマートフォンで運転手との会話の音声を録音してウーバーに送って対応を求めたり、緊急時に簡単な操作で地元警察に通報したりできる。


運転手の登録要件も国や地域の規制に応じて厳しく定めている。

例えば、米国では一般的に16歳で運転免許を取得できるが、ウーバーに登録できるのは21歳以上で、25歳未満では3年以上の運転経験が必要

運転手を登録する際は損害保険などの書類の提出を求め、登録後もウーバーが事故歴や犯罪歴などを定期的に確認する。


運転手が事故を起こした場合、乗客を含め被害を受けた人、物に対し、ウーバーが契約する損害保険として最大100万ドル (約1億5,000万円) が補償される制度がある。



*Picture: © Audio und werbung / shutterstock.com



(2023年12月1日号掲載)

ダイエット目的、糖尿病薬に殺到 供給不足で処方できず、深刻化

2023年11月11日

中国肥満と前段階の過体重の総人口が6億人と米国を抜き、世界最多を独走中 (中国メディア推計)。

生活習慣病の深刻化で医療体制を圧迫し、糖尿病治療薬を「痩せ薬」として使用する事例も多発。

過剰なダイエットが命に危険を及ぼすケースもあり肥満が社会問題化している。


糖尿病薬は日本や米国でもダイエット目的で入手希望者が殺到。

供給不足で患者に処方できない事態が生じ、急激な体重のリバウンドが起きやすいことなどが理解
されていない問題点も指摘される。


「痩せ薬」と扱われているのは「GLP1受容体作動薬」。

中国メディアによると、糖尿病患者を装いインターネット上の薬局で薬を購入したり、転売品を買い取ったりするケースが多発。

日本では供給不足が深刻で、日本医師会の宮川政昭 (みやかわ・まさあき) 常任理事が10月の定例会見で、健康な人がダイエットで使うのではなく「糖尿病患者に使える体制を守りたい」と訴えた。


米国成人肥満率42%で、糖尿病の有病率も世界平均より高い。

国際糖尿病連合 (IDF) によると、米国内の推定患者約3,200万人で、テレビで糖尿病治療薬の宣伝が頻繁に流れる。


近年、痩せ薬としての使用が拡大し、本来は治療対象とならないハリウッド俳優たちの間でも流行。

費用は月20万円程度と高額だが、食品医薬品局 (FDA) によると供給が追いつかない状態という。


ワシントン大のマイケル・シュワルツ教授 (内分泌学) は、服用をやめた途端にリバウンドが起きる点を懸念。

「(肥満解消の) 決定打でも最終解決でもない」と安易な使用に釘 (くぎ) を刺した。


*写真はイメージ



(2023年12月1日号掲載)

Popular Post