Wednesday, Apr 30

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NYタイムズ、オープンAIとMS提訴 著作権侵害、無断利用の損害賠償


2023年12月28日

大手メディアのニューヨークタイムズ (NYT) は12月27日、記事無断利用著作権侵害されたとして対話型人工知能 (AI) 「チャットGPT」を開発した新興企業オープンAIと提携先のマイクロソフト (MS) を相手取って損害賠償を求める訴訟をニューヨークの裁判所に起こした。

米主要メディアがAI開発企業を著作権侵害で訴えるのは初めて。


訴えによると、チャットGPTや、MSの対話型AI「コパイロット (Copilot)」が NY・タイムズの記事を許可なく学習し、詳細な要約や抜粋を回答することによって、購読料や広告収入が損なわれたと
主張。

こうした「タダ乗り」の損害額は数十億ドル (数千億円) に上ると強調した。


NY・タイムズは同社の記事が組み込まれた対話型AIと、その技術基盤である大規模言語モデル破棄することも求めた。

NYTは、オープンAIとMSが対価を支払い、コンテンツを利用することに向けて交渉したものの、合意に達しなかったと説明している。

オープンAIは「私たちとNYTの対話は生産的で前進していただけに、今回の (提訴の) 動きに驚き、失望している」とコメントした。


オープンAIは昨年7月に米AP通信と、12月にドイツのメディア大手アクセル・シュプリンガー (Axel Springer) と、それぞれ記事利用などに関する提携を発表した。


一方、日本新聞協会は日本の著作権法が対価を払わずに無断で生成AIに学習させることを認めていることに懸念を表明し、早急な法改正を検討するよう求めている。



(2024年1月16日号掲載)

EU、法制化へ一歩リード、世界標準めぐり主導権争い 米国、AI管理へ大統領令、開発側に情報提供義務化

2023年12月10日

欧州連合 (EU) は12月9日、対話型人工知能 (AI) 「チャットGPT」など生成AIを含む包括的なAI規制法案に合意した。

いち早くAIの悪用を防ぐための法制化に向けた道筋をつけ、米国や中国などが展開する規制をめぐる主導権争いで一歩リードした格好だ。

EUのルールが世界の標準となる「ブリュッセル効果」 (EU本部の所在地) を生む狙いもある。



▽生みの苦しみ

「これはマラソン協議」。

全加盟国で構成する理事会と欧州議会、行政執行機関の欧州委員会の3者による大詰めの法案協議は難航を極めた。

生成AIの規制や当局による生体認証の使用制限をめぐり理事会と議会が対立。

当初は12月6日、7日の2日間で終える予定だったが、20時間以上議論しても決着がつかず3日目に突入。

合意の発表は12月9日未明だった。


今後の政治日程から3者は2023年内の合意にこだわった。

EUは今年6月に欧州議会選を控え、選挙後には欧州委員会トップの欧州委員長やEUを国際的に代表する大統領が新しく選ばれる。


法案は3者が合意した上で、欧州議会と理事会でそれぞれ正式に承認する必要がある。

協議が2024年まで流れ込めば欧州政界は選挙モードに突入し、法案を成立させるための時間は限られる。

選挙までに決着が付かなければ、成立が見通せなくなる。


欧州議会の交渉担当者は合意後「EUはこれまで世界に素晴らしい貢献をしてきた」と国際規範形成における欧州の実績を強調。

法案は「我々の未来に大きな影響を与えるものだ」と満足感を示した。



▽競争激化

AIを規制する動きは世界的な広がりを見せる。

バイデン大統領は昨年10月、AIのリスク管理のため、国家や経済の安全保障への影響が懸念される高度なAI技術の開発企業に、安全試験の結果などの情報提供を義務付ける大統領令を出した。

偽情報の拡散対策で政府公式コンテンツを認証する仕組みを導入し、医療や教育での活用促進策も盛り込んだ。

開発と利用を管理する国際枠組みの確立へ日本やインドなどとも連携する。


ホワイトハウスは「AIの将来性リスク管理米国が世界をリードする」と強調した。

米国にはマイクロソフトグーグルなど世界的AI企業有力研究機関が集中しており、国際的なモデルとなる可能性がある。

連携相手に開発を急速に進める中国は含めていない。


大統領令は「AIを安全で信頼できるものにする」と明記した。

安全試験の結果について、戦時など重要局面で民間企業を統制する権限を大統領に与えた国防生産法に基づき、AI技術の公開前に提出するよう企業に要求した。

従わなければ、政府が訴訟を起こすことができる。

試験の基準は国立標準技術研究所 (NIST) が作成する。


米商務省は、生成AIによる動画や音声を識別可能にする「電子透かし」の技術や、コンテンツの認証に関する手引を作成する。

他国にも参考になる内容とし、国際的な基準作りを主導する考えだ。


医療や新薬開発でのAI利用を促すため、補助金を拡充。

同時に、責任ある活用のために健康被害の報告を集める仕組みを厚生省に作る。

教育分野では、個々の生徒に合わせた授業提供システムの開発を支援する。


犯罪捜査や裁判の公正を保つことを目的に、監視や仮釈放の手続きにAIを使う事例集も作成。

有能な技術者を国外から獲得するため、査証 (ビザ) の取得や移民手続きの刷新も図るとした。


優先度の高い対策は90日以内に実行する。

個人データ保護のための法律制定を議会に求めた。



(2024年1月1日号掲載)

銃撃事件、日本人女性が犠牲 ラスベガスの大学准教授

2023年12月9日

ネバダ州のネバダ大ラスベガス校で12月6日に起きた銃撃事件で、死亡した3人のうち1人が同校で日本語などを教えていた日本人准教授タケマルナオコさん (69) だったことが8日に分かった。

大学などが明らかにした。


タケマルさんの同僚であるマーガレット・ハープ准教授は8日の記者会見で「悲しみに打ちひしがれている」と声を詰まらせた。

タケマルさんは日本語の学習プログラムを作成するために2003年、大学に雇われたと明かした。

「学生のやる気を引き出すのが上手だった」と偲んだ。


バイデン大統領は同日、ラスベガスで演説し、全米で銃犯罪が後を絶たない現状を「異常だ」と厳しく非難し、銃規制強化を訴えた。

下院多数派を握り、銃擁護ロビー団体の支援を受ける共和党に、建設的な議論に応じるよう強く求めた。


サンフランシスコの日本総領事館は「家族や関係者と連絡を取り支援していく」とコメントを出した。


死亡した他の2人は64歳と39歳の教授ら。

大学はホームページに3人の写真を公表し「決して忘れない」と追悼した。


事件は12月6日の日中に発生。

ラスベガス近郊に住むアンソニー・ポリト容疑者 (67) が拳銃を発砲後、駆け付けた警察官に射殺された。


*Picture:© Ken Wolter / shutterstock.com



(2024年1月1日号掲載)

CA州「焼酎」販売OKに 輸出に弾み、韓国勢に並ぶ

2023年12月8日

米国で焼酎 (Shochu)を手に、カンパイしよう!

カリフォルニア州で、ワインやビールの販売免許だけではこれまで認められていなかった飲食店での焼酎販売が、一定条件の下で新たに許可された。

韓国の蒸留酒ソジュ (Soju) は1998年から販売が認められており、韓国勢にようやく肩を並べた
形だ。


日本の関係者からは「米国への輸出に弾みがつく」と歓迎の声が上がっている。

日本酒に比べて知名度が劣る焼酎の消費拡大につながりそうだ。


2023年10月に、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事がアルコール飲料規制に関する改正法に署名し、実現した。

CA州ではレストランなどの飲食店が酒類を販売する場合に、ビールやワイン、蒸留酒など酒類の分類に応じて異なる免許が必要で、焼酎は許可を得るハードルが高い全酒類免許義務付けられていた。

一方、ソジュはアルコール度数が24度以下であれば許可が比較的容易に得られるワイン免許での販売が認められていた。


焼酎を輸出する日本の酒造会社はアルコール度数を24度以下に調整して、商品ラベルも敢 (あ) えてソジュだと記載してきた経緯がある。

今後はソジュと偽らなくても、24度以下なら日本食レストランなどで焼酎として売ることができる

焼酎の名称が知られることで、全米での長期的な販売増加につながる効果も期待される。


ニューヨーク州はカリフォルニア州に先駆け、2022年7月からビール・ワインの免許で焼酎が販売できるようになっていた。

日本酒造組合中央会は当時「長年この実現を望んでいたので大変うれしい。

焼酎の楽しさを知ってもらいたい」との声明を発表した。



(2024年1月1日号掲載)

ウインターミーティング開幕 大谷移籍交渉、数日中に決着?

2023年12月5日

MLB球団幹部や代理人らが一堂に会して移籍交渉などを進めるウインターミーティングが12月4日、テネシー州ナッシュビルで開幕。

エンゼルスからフリーエージェント (FA) 権を取得した「二刀流」の大谷翔平選手や、プロ野球オリックスから移籍を目指す山本由伸投手の交渉に関心が集まる中、多数の関係者が会場入りした。

メジャー公式サイトは大谷選手について「決断は間もなく下される」と、数日内に去就が決まる
見通しを伝えた。

ドジャース、カブス、ブルージェイズ、ジャイアンツ、エンゼルスが候補とされる交渉は最終局面に入り、12月7日までのウインターミーティング中に決着するかもしれない。

*当記事は12月5日時点の状況

25歳と若く、3年連続で沢村賞に輝いた山本投手の評価も高く、ヤンキース、メッツ、ドジャース
などが獲得を目指しているとされる。

山本投手と同様にポスティングシステムを利用した今永昇太投手 (DeNA) と上沢直之投手 (日本ハム)、楽天から海外FA権を行使した松井裕樹投手 (楽天) の交渉も進展が見られるか注目だ。


▪︎ ウインターミーティング:MLBでオフの12月に開催される恒例の会議。大リーグ機構の首脳や球団幹部、代理人らが一堂に集まり数日間にわたって協議するほか、球団職員がマーケティングや組織運営など多様な分野について情報交換を進める。選手の移籍交渉やトレードなどの話し合いも活発に行われ、期間中に大型契約がまとまることも多い。


*Picture:© Anton Garin / shutterstock.com


(2023年12月16日号掲載)

航空運賃「悪用」に警鐘 米大手、3年間搭乗禁止も

2023年12月4日

米国で航空運賃が高騰する中、経由地で降りて乗り継ぎ便に搭乗しないことで出費を抑える「スキップラギング (skiplagging)」が問題化している。

扱う業者は運賃体系の穴を突いて「格安料金を提供している」と謳 (うた) うのに対し、運送約款で禁止した航空会社は「悪用だ」と警鐘を鳴らす。

利用者の航空券を没収し、3年間の搭乗禁止としたケースも起きた。


航空運賃は燃料費や需要、他社との競合など様々な要素に基づいて設定され、単純に旅行距離に
応じて決まるわけではない。

これを逆手に取り、訪れたい都市への直行便を購入するよりも、訪れたい都市を経由して別の都市
まで飛ぶ航空券を割安な価格で買うのがスキップラギングだ。

違法ではないが、乗り継ぎ便に搭乗しないことで出発の遅れを招いたり、他の顧客の予約機会を奪ったりする恐れがあり、全日本空輸や日本航空も約款で「実際の搭乗を目的としない予約行為を禁止します」と釘 (くぎ) を刺している。


ニューヨーク・タイムズ紙 (電子版) によると、アメリカン航空はフロリダ州ゲインズビルの空港で今年夏、スキップラギングを企てた当時17歳の少年からノースカロライナ州シャーロット経由のNYまでの航空券を没収。

シャーロットまでの航空券の買い直しを求め、3年間の搭乗禁止とした。

ニューヨークまでの航空券は150ドル (約22,000円) と、シャーロットまでより300ドル程度安く売っていたという。


アメリカンは8月、スキップラギングの航空券を販売する業者を相手取ってテキサス州の裁判所に提訴した。

だが、ユナイテッド航空がかつて業者に対して起こした訴訟は棄却された。

この業者は公式サイトで「訴訟になったが、当社が勝利を収めた」と主張している。



(2023年12月16日号掲載)

有人月着陸1年以上遅れも NASA報告書、開発計画再検討

2023年12月3日

米主導の国際月探査アルテミス (Artemis) 計画)」の目玉となる有人月面着陸について、航空宇宙局 (NASA) が目標とする2025年12月の実現は困難との報告書を政府監査院 (GAO) が12月3日までにまとめた。

米宇宙企業による着陸船や宇宙服の開発が遅れ、2027年前半にずれ込む恐れがあるとした。


NASAは当初2028年を目標としたが、トランプ前政権が2期目の実績とすることを狙って2024年に
前倒しした。

2021年に政権交代した後、バイデン政権は1年だけ遅らせた。

NASAの担当者らは開発計画の再検討を進めているという。


有人月面着陸は、まず地球を周回する燃料基地を飛ばす。

その後に着陸船スターシップ (Starship) が無人で出発し、燃料基地で補給を受けてから月の軌道上で待機する。

飛行士は別の宇宙船オリオン (Orion) で月に向かい、スターシップに乗り換えて月面に降りるという複雑な計画だ。


スターシップはスペースX (SpaceX) が担当しているが、基となる機体は今年4月と11月の飛行試験を完遂できなかった。

燃料補給など次の段階に進めずにいる。

一方、NASAのオリオンは昨年、月との間を行き来する無人試験に成功した。


NASAはこれまで宇宙機の開発から打ち上げまでに平均7年8か月を要している。

今回与えられた時間は6年7か月で、報告書は「有人飛行の複雑さを考えると現実味がない」と指摘した。


宇宙服はNASAが14年の歳月と600億円をかけて開発を試みたが断念し、米宇宙企業アクシオムスペース (Axiom Space) に引き継いだ。

報告書は、設計完了までに生命維持機能の増強など相当な作業が残っているとした。



(2023年12月16日号掲載)

米人若者にイスラエル離れの動き 抗議デモ頻発、ヘイトクライムも

2023年12月3日

米国で若者を中心にイスラエル離れが進んでいる。

ユダヤ系ロビー団体が政財界に大きな影響力を持ち、長年にわたり後ろ盾になってきた米国では、イスラエル批判を公言することは避けられる風潮にあった。

だが、パレスチナ自治区ガザでの人道危機を受け、抗議デモが頻発。

一部企業は「反ユダヤ主義だ(anti-Semitism)」と反発し、憎悪犯罪 (ヘイトクライム) も増加する。



▽ジェノサイド

「ガザを解放せよ」。

11月9日、ニューヨーク中心部に数千人が集まったデモには、高校生や大学生の姿が目立った。

「SNSで多くの民間人犠牲者の姿を見て、抗議の意思を示すために来た」

高校3年生サッチェルさん (17) は友人らと初めて参加した。


建築業ナリーさん (30) は「米国はイスラエルを支援しているので、自分の税金がガザでの民族大量虐殺 (ジェノサイド) に使われることになる」と憤る。

2人とも名字を明かすのはためらう。

マスクで顔を半分隠す参加者も。

「反ユダヤ主義だと報復に遭うかもしれない」

サッチェルさんが不安げに話した。


11月29日には、恒例の巨大クリスマスツリーの点灯式が開かれたロックフェラーセンター周辺でも抗議デモがあり、警察との小競り合いが起きた。



▽世代間格差

イスラム組織ハマスの奇襲で戦闘が始まった10月7日、ハーバード大の学生団体がパレスチナへの抑圧的な占領政策を強調し「責任は全面的にイスラエルにある」との声明を出した。

投資会社の経営者らは即座に反発し「関係学生は雇用しない」として氏名の公表を大学側に求めた。


イスラエルへの抗議が他の大学にも広がると、複数の有力法律事務所は大学側に「反ユダヤ主義」の取り締まりを要求。

コロンビア大などは親パレスチナの学生グループの活動を制限した。


CNNテレビの10月の世論調査によると、イスラエルの軍事的対応を「正当化できる」と回答した割合は65歳以上で93%

しかし、18~34歳では57%に留まり、世代間格差が鮮明になった。



▽転化

イスラエル、パレスチナそれぞれへの批判は、ヘイトクライムに転化している。


10月14日、イリノイ州でパレスチナ系米国人の男児 (6) が自宅で大家の男 (71) に26回刺されて死亡。

男は「イスラエルの出来事に怒りを覚えた」と語った。


10月31日には「学内で撃ち殺す」とユダヤ系への殺害予告を投稿したとして、ニューヨーク州にあるコーネル大の男子学生 (21) が逮捕された。

11月25日にはバーモント州でパレスチナ出身の男子大学生3人が白人の男 (48) に路上で突然撃たれた。


「教師たちもガザでの衝突を生徒にどう説明すればいいのか悩んでいる」

ユダヤ系とパレスチナ系が共に通うニューヨーク市の学校でカウンセラーを務めるページさん (33) は「少しでも片方の立場を擁護すれば、もう片方から強く糾弾されてしまう」と吐露した。


*写真は、ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃に反対し、ニューヨークの42丁目周辺で集会を開いたイスラエルとパレスチナの支持者たち (10月9日=ニューヨーク)

*Picture:© lev radin / shutterstock.com



(2023年12月16日号掲載)

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